うつ病

うつ病:審査請求(不服申立)で遡及2級が認められた事例(処方薬の関係)

2020/11/07 うつ病

1.病歴
その方は28年前に電車に乗っているときに、動悸、震え、不安感があり、近所のA内科を受診し、不安神経症と診断されました。
その後別のBクリニックを紹介され、約1年9ヶ月受診しました。
4人家族で生活費もままならず、生活保護を検討するほど経済的に窮し、もう限界と思った瞬間にパニック症状が出るようになり、家事、炊事、通院も含め一人での外出もできなくなりました。
その後、友人の勧めで、パニック障害に詳しいCクリニックに転医しました。
最初は、近所の友人にそのクリニックに連れて行ってもらい、受診していました。
夫からは、「何で1人で病院に行けないんだ!」と怒鳴られ、もう離婚し生活保護に入ろうと、医師にその話をすると、「旦那さんを連れてきなさい」と言われ、次回受診時、医師がご主人に、「奥さんは見た目では分からないけど、死の苦しみなんですよ」と言ってくれて、涙が溢れて止まらなかったそうです。
そのクリニックに約26年間毎月通院しましたが、その中で1人で受診できたのはわずか数回で、後は、近所の友人とご主人に連れて行ってもらったそうです。
約26年間就労も殆どできませんでした。

2.無料相談~裁定請求~障害基礎年金事後2級受給決定~審査請求~障害基礎年金遡及2級受給決定
その方は障害年金に詳しい社労士を探して、まず遠方ながら私に無料相談がありました。
以前転倒し、脳脊髄液減少症の疑いで脳外科にもかかっており、障害年金を申請したいとのことでした。
しかし、精密検査で脳脊髄液減少症の確定診断は得られず、28年前から患っているうつ病で障害年金を申請する方針としました。
うつ病の初診はA内科ですが、28年前のカルテは既に残っておらず、2番目に行ったBクリニックは既に廃院でした。
しかし、3番目に行ったCクリニックで、A内科、Bクリニックの受診歴を把握していたため、初診証明は何とかなりました。
初診日の1年半後の障害認定日頃は、Bクリニックを受診していました。
Cクリニックに最初に受診したのは、初診日から1年11か月後でした。
既に廃院となっているBクリニックで診断書を書いてもらうことはできないため、障害認定日時点の診断書については、やむをえずCクリニックに最初に受診した時点の診断書をCクリニックに書いてもらいました。
また、裁定請求(現在)時点の診断書もCクリニックに書いてもらい、両者の診断書を添え、うつ病で認定日(遡及)請求手続きを年金事務所でしました。
その結果、裁定請求(現在)時点は障害基礎年金2級が認められました。
しかし、障害認定日時点は、障害年金2級に該当しないとして、不支給決定となりました。
不幸中の幸いだったのは、障害年金2級に該当しないとした「棄却」決定であり、認定できない「却下」決定ではなかったことです。
障害認定日時点の診断書は原則初診日から1年半後から1年9ヶ月後までの3か月間の現症日の診断書であることが必要です。
請求するときに必要な書類等 医師の診断書

しかし、初診日から1年11か月後の診断書でも、認定できない「却下」決定ではなく、認定(障害の程度を判定すること)はできるが、障害年金2級に該当しないとした「棄却」決定だったのです。
障害認定日時点、裁定請求(現在)時点共に、傷病名は「うつ病」、日常生活能力の程度は「4」であり、本来両者2級が認められるべきです。
厚生労働省の保有個人情報開示請求

で、障害状態認定調書を取り寄せました。
すると、障害認定日時点、即ちCクリニックに最初に受診した時点の診断書の処方薬には、抗不安薬のみで、抗うつ剤が無いことで、軽度と見られたことが原因とわかりました。
Cクリニックに最初に受診したときはまだ、抗うつ剤が処方されていなかったのです。
(しばらくして、抗うつ剤が処方されるようになりました。)
その方と相談の上、遠方の厚生局に対して、審査請求をすることにしました。
Bクリニックは廃院のため、どうにもならず、Cクリニックの初診頃のカルテを取り寄せました。
すると、前医(Bクリニック)での受診状況を本人に聞き取りした内容が1頁記載されていました。
その中に、2行だけ、前医Bクリニックでの処方薬の記載があり、抗うつ剤名と抗不安薬名の記載がありました。
前医Bクリニックで抗うつ剤処方があることがわかり、それをメインに審査請求で、遠方の厚生局の社会保険審査官に主張し、障害基礎年金遡及2級が認められました。
障害認定日は約26年前であり、26年分の年金がもらえるといいのですが、
年金の時効

があり、最近の5年分しか年金をもらうことはできません。それでもかなり高額な一時金をもらえることになり、お電話で喜びの声を頂戴しました。


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