8月 7th, 2017

双極性感情障害:障害基礎年金2級が決定(全国対応の実績)~精神ガイドライン ~20歳前傷病

2017/08/07 躁うつ病

双極性感情障害(そううつ)で障害基礎年金2級(事後重症、20歳前傷病)が
支給決定した遠方の方の実績です。(岐阜・名古屋・全国の裁定請求の実績)

その方(女性)は、幼少時より、同級生等からいじめを受け、自分の持ち物に触ると
ばい菌がつくなどと言われたりしました。
高校卒業後、遠方の専門学校に入学し一人暮らしを始めましたが、いじめとホーム
シックのため、幻聴、摂食障害、パニック発作などがあり、専門学校を中退し、
実家に戻りました。
精神科を初めて受診したのは、20歳の誕生日の10日程前でした。
抑うつ状態と診断されました。
その後、一人で外出することはできず、ひきこもりとなりました。
数年経過し、少しは外出できるようになり、パートに挑戦しましたが、
他の人と同じように仕事ができず、上司、先輩から罵倒され、ストレスが溜まり、
自傷行為、パニック発作が悪化し、結局解雇となりました。
その後、再度パートに挑戦しても、同様に、上司、先輩から叱責を受け、ストレスが
溜まり、退職に追い込まれました。
現在、その方はごく短時間の就労をしていましたが、清掃のような単純作業で、
しかも自分のペースでしてよいという配慮された雇用(アルバイト)でした。
しかし、現在のごく短時間のアルバイトの給料では、病院までの交通費と治療費で
消えてしまい、ご家族内で肩身が狭いと仰っていました。
現在通院の病院では、双極性感情障害と診断されていました。

遠方の方のため、最初お電話で相談がありました。
電話では、予想外に、明るく、気さくな女性でした。
家族以外の人とは、対面では緊張であまり話ができませんが、電話だと話しやすい
ようでした。
既に、医師に診断書を書いてもらったというので、診断書を見せてもらいました。
不備、実態に合っていない点が多くありました。(下記1~6など)
(1)初診日の確認手段の記入もれ
(2)通院歴のもれ
(3)処方薬の記載が無い
(4)日常生活能力の判定の「社会性」の項目が実態にあっていない
(5)現症時の就労状況は、ごく短時間の配慮されたアルバイトであったにも
かかわらず、一般雇用となっていた。
(6)記載必須欄が空白であった。
昨年、厚生労働省において、「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級
判定ガイドライン」が策定され、9月1日施行されました。
その中で、診断書記載項目のうち、「日常生活能力の程度」の評価及び
「日常生活能力の判定」の評価の平均を組み合わせたものが、どの障害等級に
相当するかの目安が示されました。
また、「現在の病状又は状態像」、「療養状況」、「生活環境」、「就労状況」、
「その他」について、考慮されるべき要素と具体例が明示されました。
上記(3)は、ガイドラインの「療養状況」に相当する内容であり、医師に
処方薬を追記依頼しましたが、対応していただけなかったため、最近のお薬手帳
を数回分コピーして裁定請求書類に添付しました。
上記(4)は、ガイドラインの「障害等級の目安」に相当する内容であり、
外出先で母親とはぐれるとパニック発作を起こしたり、各種手続きも一人では
できないこと、などを医師にご説明し、日常生活能力の判定の「社会性」の項目
を修正していただきました。
上記(5)は、ガイドラインの「就労状況」に相当する内容であり、就労はして
いても、充分配慮された上でのごく短時間の就労(アルバイト)である、
と医師に修正していただきました。
上記(1)、(2)、(6)は、医師に手紙で丁寧に説明し、追記、修正して
いただきました。

先日、障害基礎年金2級の支給決定連絡があったとお電話があり、経済的に
少し余裕ができたのがうれしいと、お喜びでした。
上記(1)~(6)の対応が支給決定に大きく寄与したのは間違いなく、
本当に良かったと思います。
今後は、経済的な理由から、もっと長時間の就労に挑戦したいと仰っていました。
しかし、障害者を受け入れる求人はまだ少なかったり、入社しても配慮が充分で
なく、以前のように叱責、罵倒され、長く続かないことも多いです。
是非、双極性感情障害といった障害者にも充分配慮した雇用が増えることを期待
したいと思います。

また、今回のケースで特筆すべきは、その方は非常に幸運だったことです。
初診は、20歳の誕生日の10日程前でした。しっかり初診証明もとれました。
その方は、20歳から引きこもりであった数年間国民年金保険料が未納で、
免除申請もしていませんでした。
したがって、もし初診が実際より10日後で、20歳を迎えていたら、保険料
納付要件は満たさず、障害年金を受給できませんでした。
20歳前の年金制度に加入していないときに、初診日がある場合は、納付要件は
問われないという特例に救われたのです。
国民年金保険料の未納が多いといった報道を耳にします。
国民年金保険料の納付率は(申請免除、納付猶予を除いても)約65%です。
一方、日本人の約6~7%は障害(身体、知的、精神)を持つと言われており、
誰もが障害年金のお世話になる可能性があるといっていいでしょう。
今迄障害年金の相談を受けた方で、保険料納付要件を満たさず、代理をお断り
させていただいた方は何人もいらっしゃいました。
社会保険労務士であっても、保険料納付要件だけは、どうしてあげることも
できません。(社会的治癒を利用して救済可能なケースもありますが、
すべての方を救済できるわけではありません。)
国民年金保険料は是非納付していただきたいと思います。
どうしても、経済的に納付できない場合は、保険料免除・納付猶予制度を
ご利用ください。
障害年金制度は、経済的弱者にとても優しく作られており、事前に申請手続き
をしておけば、障害年金の保険料納付要件は満たされることになります。
(障害年金の保険料納付要件や保険料免除・納付猶予制度について、詳しくは
日本年金機構のホームページをご覧いただくか、我々社会保険労務士にご相談
ください。)
今回の女性は、初診の時点では保険料納付要件のことは頭にないどころか、
障害年金制度の存在自体ご存知でなかったわけですから、幸運だったとしか
言いようがありません。
しかし、一般の方は長い人生の中で予期せぬ障害を負ったときに、幸運を期待
しなくとも安心して障害年金制度を利用できるように、普段から国民年金
保険料を納付していただくか、保険料免除・納付猶予の申請をしておいて
いただきたいと思います。