双極性障害・広汎性発達障害:返戻後取下げ、再請求(岐阜・名古屋周辺域の実績)
その方(男性)は、小学校時代から不登校となり、中学に入り、病院を受診し、アスペルガー症候群と診断されました。
3ヶ月に1度、経過観察で病院を受診し、問診主体で服薬はありませんでした。
高校、専門学校時代は、すっかり回復し、通算6年間はほぼ皆出席で元気に通学していました。
しかし、就職後、人間関係がうまくいかず、会社に行けなくなり、精神科に通院し、適応障害(後にうつ病)と診断され、退職となりました。
その後再就職をするも、仕事に熱中しすぎる時期と布団から起きられない時期を繰り返し、転職を繰り返しました。
布団から起きられない時期は、言葉を発することもできないほどで、電話もできませんでした。
直近の病院では、双極性障害・広汎性発達障害と診断されました。
以前に障害年金請求の請求代理をさせていただいた方の友人が無料相談をしたいとのことで、お話を伺いました。
中学校時代は経過観察で病院にかかっていましたが、高校、専門学校時代通算6年間は、ほぼ皆出席で元気に通学されていたため、社会的治癒を適用できると考え、就職後初めの精神科受診を初診として、双極性障害・広汎性発達障害で裁定請求をしました。
しかし、その後3ヶ月程で、日本年金機構より返戻がありました。
社会的治癒が認められないため、中学校時代の精神科受診を初診として、障害基礎年金の裁定請求を検討ください、という内容でした。
やむなく、本裁定請求は取り下げ、中学校時代の初診で裁定請求を再度行うことにしました。
その結果、無事障害基礎年金2級が支給決定しました。
日本年金機構からの返戻時の対応について、詳しくご説明します。
高校、専門学校時代通算6年間は、ほぼ皆出席で元気に通学されており、社会的治癒が認められないのは不当であるため、このまま審査を続けてもらい、不服申立で争うことが妥当と考えていました。
就職後の初診であれば、障害厚生年金の裁定請求となり、1,2,3級とあります。
しかし、中学校時代の初診の場合、20歳前障害で障害基礎年金の裁定請求となり、1,2級のいずれかしかなく、3級はありません。
中学校時代の初診としてしまうと、受給の可能性は低くなります。
また、同じ2級であっても、障害基礎年金は障害厚生年金に比べ、金額が低くなります。
社会的治癒は一般に5年以上の寛解状態があれば認められるケースが多いと言われています。
高校、専門学校時代通算6年間は、寛解状態にあったことを示す証拠を裁定請求時に添付しており、充分社会的治癒が適用できるため、不服申立で争うつもりでいました。
対応方法について、その方の住居近くの喫茶店で長時間話し合いました。
不服申立で争いながら、予備的に中学校時代の受診を初診として請求をするといった、並行に進める案もご説明しましたが、その方は不服申立で争うことは望まない、ということでした。
残念ながら本裁定請求は取り下げ、中学校時代の初診で裁定請求を再度行い、無事障害基礎年金2級が支給決定し、結果的には社会的治癒を利用しませんでした。
障害年金制度において、「社会的治癒」という概念は非常に重要であり、「社会的治癒」期間の証明によって、本来受給できなかった方でも受給できた方が多くいらっしゃいます。
一方、初診時の保険料納付要件を満たさないため、障害年金の申請を諦めてしまった方も多くいらっしゃるようです。
非常に重要でありながら、実は、「社会的治癒」について、明確な基準は一切ありません。
(前述の5年間という数字も、多くの社会保険労務士等が実績を積み上げ、得られた経験値です。)
厚生労働省は、社会的治癒が認められるかどうかは、個別に判断するとしています。
現在日本年金機構のホームページで公開されている全116頁の「障害認定基準」に「社会的治癒」に関する基準を半頁でも割いていただければ、障害年金制度がより身近で利用しやすい制度になるのではないかと思います。