2024年1月

2度の脳梗塞で、4回の返戻後障害厚生年金2級を取得した事例

2024/01/08 肢体障害

                                          更新日時 2024/1/8

1.経緯

その方は平成23年、脳梗塞を発症、A病院入院、その後B病院でリハビリ後、左半身は不自由でしたが、デスクワーク限定で職場に復帰しました。

B病院でリハビリ後の服薬治療はCクリニックに通院していましたが、平成28年、2回目の脳梗塞を発症、A病院に入院後、左半身の不自由さは増し、職場復帰はできませんでした。

2.無料相談~4回の返戻後、障害厚生年金2級決定 

その方は、2回目の脳梗塞の約1年後、当事務所に相談がありました。
裁定請求は、平成23年、1回目の脳梗塞の約半年後現症日の診断書をB病院で作成いただき、平成28年、2回目の脳梗塞の約1年2月後現症日の診断書をA病院で作成いただき、障害認定日+事後重症請求の手続きをしました。
当初、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞は同一傷病として、請求しました。
その後、日本年金機構より、4回の返戻(へんれい)がありました。

■返戻(1回目)の内容

 A病院医師への問い合わせ:
 「2回目の脳梗塞で症状が悪化しているが、この原因は再発ですか。それとも廃用性障害ですか。」
 といった問い合わせでした。

■返戻(1回目)に対する対応 

 A病院医師に、問い合わせに対する回答(下記)を書いていただき、日本年金機構に提出。
 「MRI上明らかな再発は認められないが、TIA、画像で検出しにくいレベルの脳梗塞の可能性。」
 そのため、廃用性障害ではなく、再発であることを示すことができました。

■返戻(2回目)の内容
 1回目の脳梗塞後のB病院、Cクリニックでのリハビリ、治療状況の調査のため、B病院医師、Cクリニック医師に対して、問い合わせがありました。

■返戻(2回目)に対する対応
 B病院医師、Cクリニック医師に回答を書いていただき、日本年金機構に提出。
 1回目の脳梗塞後、適切なリハビリ、治療が行われていたことを示せました。

■返戻(3回目)の内容
 「1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞は別傷病と判断されました。
 また、1回目の脳梗塞の約半年後現症日のB病院の診断書は障害認定日の診断書と認められないと判断されました。
 そのため、1回目の脳梗塞初診日の1年半後の診断書を提出してください」とのことでした。
 提出できない場合は、1回目の脳梗塞後の症状は今回の裁定請求の認定には、プラスにならず、マイナスになることを意味していました。

■返戻(3回目)に対する対応
 1回目の脳梗塞の約半年後、B病院で障害者手帳の診断書が作成され、それには「症状固定」の記載があり、それを根拠に1回目の脳梗塞の約半年後、B病院での(年金の)診断書に「症状固定」の追記をB病院の医師にしていただき、日本年金機構に提出。

 1回目の脳梗塞の約半年後現症日の、B病院での(年金の)診断書は障害認定日の診断書として有効であることを示せました。

■返戻(4回目)の内容
 「1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞は相当因果関係がないと判断されました。
 裁定請求書の請求傷病を、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞の2傷病として、それぞれ症状固定したとして、請求書を修正してください。」とのことでした。

■返戻(4回目)に対する対応
 A病院に対し、2回目の脳梗塞の約1年2月後現症日の診断書に、「症状固定」の追記をしていただきました。
 また、請求傷病を、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞の2傷病とし、それぞれ症状固定したとして、裁定請求書を修正し、日本年金機構に提出。

 

その結果、非常に時間がかかりましたが、障害厚生年金2級の受給決定しました。
結果的には、「初めて2級」の扱いとなり、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞の併合の処理があり、無事障害厚生年金2級が決定しました。

初めて2級とは 障害認定基準 2ページ目

B病院での診断書に「症状固定」の追記をしていただけたので、「初めて2級」の扱いとなり、助かりました。
仮に「症状固定」の追記をしていただけない場合は、1回目の脳梗塞後の診断書の症状が差引認定の対象となり、等級2級を得られなかった可能性がありました。

差引認定とは 障害認定基準 109ページ目

当初1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞は同一傷病として、裁定請求しましたが、両者には相当因果関係がなく、別傷病とされました。
そのため、1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞の障害が併せて認定される(初めて2級)か、2回目の脳梗塞の障害の状態から1回目の脳梗塞の障害の状態を差し引かれ認定されるかという微妙な問題になりました。
1回目の脳梗塞後約半年後現症日の診断書が症状固定と認められたため、「初めて2級」として併合認定された結果、2級となりました。
脳梗塞が2回あり、症状が悪化することはよくあります。
その時に1回目の脳梗塞と2回目の脳梗塞が同一傷病か別傷病となるかの判断は、医師でなければ難しい問題であり、返戻により、医師照会(MRI画像、カルテ提出)があり、判断されることが多いようです。

脳梗塞MRI画像

今回の事例のように、複数回の脳梗塞があった場合、非常に込み入った話になります。
「初めて2級」として併合認定される場合:
  1回目の脳梗塞で発生した障害 + 2回目の脳梗塞で増加した障害 = 
  2回目の脳梗塞後症状固定したときの障害 が認定されます。
「差引認定」として併合認定される場合:
  2回目の脳梗塞後症状固定したときの障害 ー 1回目の脳梗塞で発生した障害 =
  2回目の脳梗塞で増加した障害 が認定されます。
差引認定となると、本来2級になるはずが、ならないことも充分ありえます。

1回のみの脳梗塞でも失敗が許されず、本サイトでは社労士の活用をお勧めしていますが、2回以上の脳梗塞であれば、なおさら社労士の活用をお勧めします。

本サイト参考ページ:肢体障害の障害年金は失敗が許されない理由 

 


障害年金対象外の神経症で障害年金3級を取得した事例

2024/01/06 うつ病

更新 2024/1/11

1.経緯
その方(60代男性)は、平成2年ストレスから対人恐怖症、頭痛、動悸があり、心療内科を受診し、自律神経失調症と診断されました。
その頃は仕事をせず、また国民年金加入期間でしたが、殆ど国民年金保険料を納付していませんでした。
平成8年から、一念発起し、食品製造会社で仕事をしながら整体の学校に通い資格を取得し、平成13年から資格を生かし、整体の会社でマッサージの仕事を始めました。
その頃知り合った女性と結婚されたのですが、女性にはひきこもりの娘さんがいました。
徐々に娘さんと奥様の精神状態が悪化し、家庭内が荒れるようになり、次第にその方も疲労困憊し、平成22年精神科を再び受診するようになりました。
平成30年整体の会社を定年退職し、以前勤めていた食品製造会社で仕事を始めましたが、精神的ストレスから、平成8年頃容易にできていた調理の仕事も思うようにできず、退職となりました。

離婚し家族のストレスは無くなりましたが、精神面のダメージは変わらず、何もする気がなくなってしまいました。

 

2.無料相談~障害年金対象外の神経症で、障害厚生年金3級決定 
その方は、遠方のためお電話で当事務所に相談がありました。
その方は、2重の問題がありました。
(1)平成2年の初診の心療内科受診の頃までは、無職でほとんど国民年金保険料を
  納付していませんでした。したがって、原則障害年金はもらえません。
  日本年金機構では、初診日時点の【保険料納付要件】が定められています。 
(2)現在治療中の精神科での傷病名が「適応障害」(F43)でした。
  適応障害などの神経症は障害年金の対象外であり、原則障害年金はもらえません。
  主治医は「適応障害」と診断しているところを、(当然ですが)「うつ病」などと偽ることはできません。
  日本年金機構の【障害年金認定基準(精神)】に次の記載があります。 
  (5) 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則
     として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態
     を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。
これら2重の問題があり、障害年金受給は困難かと思われましたが、次のように対応しました。
(1)の対策:社会的治癒
  平成8年からの食品製造の会社、および平成13年からの整体の会社では、
  一生懸命仕事をされており、同僚にも認められており、その同僚たちとも付き合いが
  続いていたため、「第三者からの申立書(社会的治癒)」を複数名の方に書いていただきました。
  平成2年が本来の初診日ですが、社会的治癒を主張し、平成22年を初診日として、請求しました。
(2)の対策:うつ病の病態
  現在治療中の精神科での傷病名が「適応障害」(F43)でしたが、抗うつ薬を処方されていました
  ので、処方薬名:ミルタザピン を明記していただきました。
  また、無気力で、食欲もなく、風呂にもあまり入れない状態であったため、「うつ病の病態を示している」
  ことを、医師了解の上、明記していただきました。
これら2種の対策を行い、裁定請求を行い、無事障害年金3級を受給することができました。